行書版 原・柏原立場ふじの沼           

 

保永堂版と同様に、広重は富士の頂を画面からはみ出させて描いています。右側にあるのは愛鷹山です。初版ではもう少し左まで山が描かれていたのですが、この絵は後版なので愛鷹山の左半分がカットされています。山頂の色も初摺りでは藍色ですが、これも省かれています。
副題にあるように、ここは柏原立場の東海道沿いで宝永山が見えません。手前の広い富士沼(浮島沼)を意識して描かれています。富士川から流れ出た砂礫が堆積して出来た東海道を空の馬や籠がトボトボと通ってゆきます。この辺りは平らで歩きやすいのでしょう、乗り物を利用する旅人もいなかったようです。宿場には大した産業もなく貧しい村だったようで、そんな寂しい雰囲気が出ています。